おもに海外クライムサスペンスドラマのあらすじ

視聴したドラマなどのあらすじなど

シザーハンズ

ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演の1990年アメリカ公開の映画。有名だけれども一度も観たことなく過ごしていたがたまたまテレビ放送を発見してみてみた。美術や衣装がとにかく可愛らしい作品。

 

主役エドワードのジョニーデップは機械人間で、もともとはクッキー製造工程のうちの裁断役だったのを産みの親である発明家先生が思いつきで人間化して、手をつける前に他界してしまったので手がハサミのまま、一人ぼっちで暮らしていました。

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エドワードのお庭

優しさ溢れるヒロインの母ペグに出会い、孤独な生活を哀れんだ彼女に自宅に連れて行かれ、不便や不自由はあるものの幸せな4人家族と一緒に楽しい生活を始めます。地域の住民にも受け入れられ、ハサミ技術と奇抜な感性を活かして植木のデザイン剪定やヘアーカットを始めて自身の居場所を築いていきます。

ここまで、幸せで素敵なお話。

まず、ストーリー的に幸せ。ペグ一家がいい人過ぎる!優しい!見ず知らずの人物を高校生の娘のベットに寝かせるなんて、もし自分が思春期の娘だったら家族を全力で非難するが、ウィノナ・ライダー演じる娘キムは「かわいそうな人なの」と両親に説明されて素直に従ってしまう。聞き分けよすぎでしょ!両親の人の良さも過ぎるし、娘もなんて善良なのかしら。

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カラフルなお家

そして、なんといっても美術がこれでもかと幸せ感を前面に出してくる。皆さんの暮らす町の、お家はみんなカラフルで、パステルカラーの屋根に壁、電柱もなく空は限りなく青い。画面がとにかく明るい。幸せな町を絵に描いたらこんな町並みになるでしょう。カリフォルニアに実在する町を撮影用に塗り直したそうですが、撮影が終わった後もそのままにしているご家庭があるのも頷ける。可愛いのは町並みだけではなく、エドワードのカットした作品は植木もワンコも奥様も、皆可愛い。地面を水面に見立ててイルカが波間を泳いでいるように、顔・胴体・尾の3体をそれぞれの植木に分けて仕上げているのが特に素晴らしい。ただの木がイルカに変身してしまうのですから、ハサミ人間が人気者になるのに時間はいらないですね。

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可愛い街並み

さて物語の折り返し、幸せはそう長く続きません。エドワードのカット技術を見込んで、町で発言力がありそうなマダムのジョイスが美容院の開業を斡旋します。それだけでなく彼を誘惑して一線を越えようと企みますがびびったエドワードに逃げられてしまいます。また、エドワードはキムに恋心を寄せていますがそれを伝えられず、一方のキムはなんとなく察している様子ですが、彼女にはお金持ちのボーイフレンドがいます。俺たちの車を買うためだとキムを説得し自宅に強盗に入る計画を立て、ピッキング要員としてエドワードを仲間にしますが計画は失敗してしまいます。エドワードを助けると抵抗するキムをボーイフレンドのジムが抱えて若者たちは逃走し、取り残されたエドワードだけが警察に捕まってしまいます。町のマダムたちを扇動するジョイスの影響もあり、人気者から厄介者に転落したエドワード。 ペグ一家の支えも虚しく、悪魔扱いされた彼は町の住人から追い出され元々住んでいたお城に逃げ帰りますが、追ってきたジムと格闘の末に彼を死に追いやってしまいます。キムの機転で住人には知られなかったものの、彼はそれ以来一人ぼっちでキムを想い続けながら片方でキムは、家庭を持ち孫にエドワードとの思い出を語り聞かせるのでした。

いや〜報われないエンディングだこと!前半と打って変わって画面が暗い。カットする植木も恐ろしげなモンスターに変わって、エドワードの怒りや悲しみが伝わってきます。

迫害から逃げ、一人ぼっちのお城生活に逆戻りするに至る過程で、キムにしかできなかったエドワードの救済は果たされなかったにも関わらず、彼女を愛しているエドワード自体がそれを容認していたなんて切ない。キスの一つでエドワードが救われるほど彼の愛が深かったというべきか、純愛とは自己犠牲か。主人公の純粋な愛を目の前にして我々視聴者は、愛の向けられたキムにもそれに報いる行動を求めてしまうのは何故かしら。自己犠牲を彼女にも期待してしまうので、他の男性と結婚して家庭を持ち、今では孫に、お城に住むハサミ男の物語を聞かせる姿に嫌悪感を持たざるを得ないけれども一方では、キムはやっぱりごく普通の善良な少女で、彼女の行動は自然だったと納得してもいる。「I love you」を言い合う相手は人生に一人なの?高校生の一瞬に出会った男性を一生思い続けて終わってしまうの?理想と現実を天秤にかけて、どちらかを選んで日常生活を続けるという技術を身につけて、我々は現代を生きているので、ヒロインであるキムには自分たちには出来ない理想の追求をしてほしい、そんな欲求があるのかもしれない。現実は、「常識」と言い換えてもいいかもしれない。エドワードは汚れを知らない、常識という汚れを。逃げたお城で押し寄せる住民から彼を守るためキムがエドワードが死んだを嘘をつくことも、常識を持つ少女だったから出来たことで、もし純粋無垢な心の持ち主ならば、その場を取り繕うことが出来ずに群衆に負けて一緒に死んでしまったことでしょう。

物語の全体を通して存在感が際立っているジョイス役のキャシー・ベイカーの嫌な奴ぶりが最高。国境を越えて、嫌な女は共通だなと思う。しかし嫌な奴を演じたらピカイチですねこの女優さんは。クリミナルマインドやL/Oで見た役者さんが映画にも現れて嬉しかった。これが一番の収穫かも。

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ジョイスと住民の皆さん。クリスマスファッション